所  信

 

公益社団法人新庄青年会議所

第51代理事長 山科 慎治

 

~はじめに~

終戦からわずか4年の1949年、正しく時は戦後の混沌とした状況の中、その混沌とした中に未知なる可能性を見出し、「新日本の再建は我々青年の仕事である」という使命感の下に日本の青年会議所運動の灯は燈りました。始めは小さな燈火であったその運動は、時代の変革と共に少しずつ、そして確実にそれぞれの地域の一隅を照らし、1964年ここ新庄もがみにもその燈火は伝播し、志高き青年経済人の決意と覚悟により翌年の1965年に新庄青年会議所が設立してから50年という歴史を刻むことができました。

これも偏に想いのバトンを弛むこと無く我々に受け継いで下さいました先輩諸兄のご尽力の賜物と我々の運動に対しご理解、ご協力を下さいます関係各位の皆様並びに地域の皆様の賜物であり、深く衷心より感謝申し上げますと共に敬意を表する次第です。

さて、50年の永きに亘り受け継がれてきたひとを想う心、まちを想う心、次代を担う青少年の健やかな成長を想う心、そしてその心を形に表し展開してきた運動の歴史はこの新庄もがみの歴史そのものであり、この創立51年目という新たな一歩を踏み出すべく年に変えていくものと残すもの、その2つを見分ける英知と、変えるべきものを変えチャレンジする勇気と、変えてはならないものを受け入れる情熱を持って、次代に向けての決意を新にすると共に責任世代である私たち青年が自覚と気概を持ち、行動を興さなければなりません。

また、昨今良く耳にする「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」という言葉がインフラ整備にだけ使われるものとして扱われるのではなく、この地域に住まう人々の心そのものの在り方であって欲しいと願います。地域・地方という壁を越え、老若男女という壁を越え、文化・言語・国籍という壁を越え、そして健常者と障がい者という壁を越え、この新庄もがみに住まう一人ひとりが真に住みよいまちをデザインしていくことこそ、私たち新庄青年会議所が代々受け継ぐ「もがみは一つ」という理念に繋がっていくのです。

 

~ひとを想う心~

この新庄もがみという地域をイメージするに人々はどんな姿をイメージするでしょうか。四方を奥羽山脈や神室連峰などの山々に囲まれ、地域にもたらされる自然からの恩恵、か つて新庄藩がこの地を治めた際に根付いた文化、精神性は新庄もがみが共有する財産ではありますが、私は地域をイメージする時に真っ先にその地域に住まう人々の顔を想い出します。知っている人がいれば訪れたことが無くてもその地域に対し親しみを覚えるものです。

「新庄もがみには資源が無い」という人もいますが、そんなことはありません。この地域には「ひと」という素晴らしい資源があるのです。そして地域社会を作り上げているのは「ひと」であり、この地域に住まう私たち一人ひとりが地域社会の力と成りえるのです。

自らが住んでいる地域の現状を把握し、地域の課題や問題について考え、主体的に地域社会の発展に貢献できる人財を育成することにより市民意識変革への一歩に繋げます。

近年は公益性を重視した「まちづくり」運動が多い中、「まちづくり」とは、全ての市民を視野に入れた「ひとづくり」、すなわち「人間力開発」運動であるとし、一人でも多くの自立したJAYCEEそして市民を生み出す運動をこれからも積極的に展開していきます。

 

~まちを想う心~

 近年、この新庄もがみの現状は中央と地方という構図の中、経済回復を実感するには至らず、まだまだ難しい問題が山積しているのが事実であります。

 少子高齢化や人口の流出による人口の減少、それに伴うコミュニティの空洞化や過疎化の進行による行政サービス低下の懸念、一次産業の衰退による担い手不足と耕作放棄地の問題、インフラ整備においては道路、都市計画区域、街路の整備状況共に進捗率は県内で最も低い地域となっており、また、人々の価値観やライフスタイルの変容と共に人と人との繋がりが希薄化し、伝統芸能や文化、祭りの衰退も懸念されています。

 しかし、私はこの新庄もがみにはその現状を打破できる素晴らしい精神が受け継がれていると信じています。それは新庄まつりの創始の精神です。今から約260年前、時の5代新庄藩主戸沢正諶公は、前年の大凶作で疲弊したこの地に再び活気と希望を持たせ、領民を励まそうと戸沢家の氏神である天満宮の祭典を考え、神輿を城下で巡行させました。そして、それに呼応するように町方衆は屋台(現在の山車)を飾り付け神輿のお供をし、在方衆は鐘や太鼓で盛り立てました。これが新庄まつりの起源となります。身分制度が厳しかった時代に、お互いの立場を越え、現代でいう所の官民一体となったこの祭りの精神は正にお互いの幸せとこのまちを想う相互扶助の精神であります。

私たちは新庄もがみに住まう住人としてこの相互扶助の精神を美徳とし、人と人との繋がりを取り戻し、地域コミュニティの再生によって住民自らの力による自立した地域を創造していかなければなりません。

また、地域の未来を考え行ってきた様々な事業や運動がこの先もこの地域に対して必要であるのかを検証し、形や手法は変われど地域の発展に向けて貢献できる運動で在り続けるために、自分たちの住む地域を知り、更に地域の枠を越えた多くの広域的な繋がりの中から自分の地域を見つめ直し、改めて地域の宝を創出していきます。そして、その地域の宝をしっかりと磨き上げていくと共に、より地域に評価されるには経済効果と結び付ける手法までも考えていく必要があります。

さらに、誰もが安心して暮らしていけるまちで在るために、この地域からこの国の未来を考え、真の復興に向けた取り組みや憲法改正議論、近隣諸国との領土問題、政策本位による政治選択など私たちの生活を取り巻く全てとの「つながり」と真摯に向き合うと共に相互扶助、相互理解による心のユニバーサルデザインを推し進めていきます。

 

~子どもたちの健やかな成長を想う心~

『桜咲き誇る町並みに うららかな春の風が漂う 夏のおとずれ蝉しぐれ 囃子響いて夏の空~』

昨年行われた50周年記念事業の一つであります「新庄もがみ青少年音楽交流会~つくろう!もがみのうた~」で中高生が詠った新庄もがみの情景。四季折々に豊かな表情を持ち、自然と人間が調和して悠久の時を刻んできた新庄もがみを、ここに住まう子どもたちは誇りに思い、そして大切にしていきたいという願いを感じることができました。

子どもたちのその願いを守り、夢と希望に満ち溢れる新庄もがみを想い描き、未来に貢献できるように成長させるには、まずは私たち大人(親)がこの地域のことを想い、地域に対し自信と誇りを持って力強く生きる姿を子どもたちに見せることが必要になります。

そして、その上で改めて教育というものを考えた時、教育とは家庭教育、学校教育、地域社会教育の3つの教育が有機的に連携して効果を発揮するものであり、共育とも言われるようにこの地域に住まう人々が一緒になって行っていかなければなりません。とりわけ地域社会教育に関しては「ひとづくり」という観点からも青年会議所として最も積極的に取り組むべき課題であり、家庭の教育力の低下が叫ばれる現在、地域の子どもを我が子のように考え、愛を持って育てる地域社会の重要性は益々高まっています。「学社融合」の実現に向けて学校との連携をしっかりと取り、今の学校で何を教え何が足りないのかを知り、この地域の風土、環境を活かした新庄もがみらしい教育と日本人としての心、道徳心を学ぶ教育を実践することで地域やまち、国を愛する心を育てると共に、礼儀作法や思いやりの心、協調性の大切さを伝え、子どもたちが心豊かに成長するよう積極的に取り組んでいきます。

 さらに、昨今の青少年に関する凄惨な事件やいじめ問題に触れ、私は子どもたちに「違うということを知る」機会を提供していきたい。自身と人は違っていて当たり前であり、だからこそ話合い、認め合うことが大切になってきます。地域の違い、伝統や文化の違い、国籍や肌の色、そして健常者と障がい者の違い、その違いを知り、その違いをお互いの個性として捉えることのできる人財を育成することにより、この8市町村から形成される新庄もがみは本当の意味で一つに成れ、次代に繋ぐ平和的なコミュニティになることができるのです。

 

~青年の学び舎を想う心~

 青年会議所しか無かった時代から青年会議所も在る時代となり、青年の学び舎として新庄青年会議所はその時代時代に合った運動を通し、地域のリーダーとして多くの自立したJAYCEEを地域に輩出してきましたが、これから先も変わらずこの地域に必要とされ頼られる存在で在るには、私たちの組織そのものを進化させる必要と認知度を高めていく必要があります。

 まずは、私たちの運動を周知するために、また公益団体という意味での透明性を持たせるために、しっかりとした情報発信を行っていかなければなりません。そうして私たちの運動を発信しながら、その運動の趣旨、理念を共有・共感できる同志を募り、運動の燈火を拡大していきます。さらに、私たち青年会議所が持つ「ネットワーク」と青年としての「フットワーク」を活かし、市民が主役のまちづくりにおいて人と人、人と地域を結ぶ担い手としての役割を果たし、行政や各種団体とのコーディネーターになるべくその機能を発揮していきます。

 この地に青年会議所が在って良かった、青年会議所で活動をしてきて良かった。そう言われる組織で在るために、40歳までという限りある時間の中、若い発想を大切にし、失敗を恐れず果敢にチャレンジし、この学び舎から巣立つその時まで尊い青年時代を共に駆け抜けよう。

 

~結びに~

  50年という永きに亘り受け継がれてきた伝統の中、新庄青年会議所は「明るい豊かな社会」の実現のために運動を展開してきました。そしてそれはこれから先も変わることのない共通した目的です。青年会議所が持つ特質である、若さと行動力、公正中立、単年度制による斬新な発想力を武器にこれからも地域に先駆けて行動を興していきます。

  時代の変容と共に地域の求める「明るい豊かな社会」の姿は変われど、夢と希望に満ち溢れる新庄もがみの未来を想い描き、そしてこの地域に私たち青年会議所が変わらずに在ること、それこそが大いなる希望であり可能性であるという気概を持ち、新たなる価値を創造する旗手として進一層、全ての心を集め更に前へ前へと進んでいこう。

かつてない未来をデザインし、かつてない未来を切り拓くことができるのは、私たち青年の英知と勇気と情熱を持ってしかないのだから。